小規模事業者持続化補助金を個人事業主が申請する際の注意点と必要書類
小規模事業者持続化補助金は、個人事業主の方でも申請できる補助金です。しかし、法人と個人事業主では用意する書類や確認すべきポイントが異なり、「開業届の提出日」「確定申告書の種類」「商工会・商工会議所とのやり取り」など、個人事業主ならではのつまずきポイントがいくつもあります。本記事では、開業して間もない個人事業主の方に向けて、申請前に必ずチェックしておきたい注意点を、実務目線で整理してご紹介します。
1小規模事業者持続化補助金は個人事業主も対象です
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自ら経営計画を立て、商工会・商工会議所の支援を受けながら販路開拓や業務効率化に取り組む費用の一部を補助する制度です。法人だけでなく、日本国内に居住する個人事業主(商工業者であること)も補助対象者に含まれています。
制度の基本的な対象者・補助率・補助上限額については、別記事「小規模事業者持続化補助金とは?対象要件と補助率をわかりやすく解説」で詳しく解説していますので、まだご覧になっていない方はあわせてご確認ください。本記事では、そのうえで特に個人事業主が申請時に注意すべき点に絞って解説します。
本記事は、2026年5月27日公開の公募要領(<一般型 通常枠>第20回公募、<創業型>第4回公募)の内容をもとにしています。公募回ごとに要件やスケジュールが変更される場合がありますので、申請前に必ず最新の公募要領・公式サイトでご確認ください。
2対象者要件で個人事業主が見落としやすいポイント
「小規模事業者」の従業員数の数え方を誤解していないか
小規模事業者に該当するかどうかは、業種ごとの「常時使用する従業員の数」で判断されます。
| 業種区分 | 常時使用する従業員の数の基準 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
ここでいう「常時使用する従業員」とは、労働基準法第20条の「解雇の予告を必要とする者」を指します。日雇労働者、2か月以内の期間を定めて雇用する者、季節的業務で4か月以内の期間を定めて雇用する者、試用期間中の者は含みません。さらに、個人事業主の場合は同居の親族従業員も従業員数に含めないという点を見落としがちです。家族で営んでいる事業の場合、「うちは何人の事業者になるのか」を事前に整理しておきましょう。
ここで特に迷いやすいのが「製造業その他」の考え方です。公募要領では、「製造業その他」とは自社で流通性のあるモノ(ソフトウェアのような無形の商品や無形の価値を含む)を生産する事業、他者が生産したモノに加工を施すなどして、さらに価値を付与する事業(在庫性のある商品を製造する事業)を指すとされています。また、「商業・サービス業」「宿泊業・娯楽業」「製造業」のいずれにも当てはめにくい事業(建設業・運送業など)や、区分の異なる複数の事業を営んでいて判断が難しい場合は、「その他」として「製造業その他」の従業員基準(20人以下)が使われます。
開業届の「開業日」が申請の可否を左右する
個人事業主の申請でもっとも多いつまずきが、開業日の確認不足です。公募要領では、申請時点で開業していない創業予定者は補助対象外とされており、すでに税務署へ開業届を提出していても、開業届上の開業日が申請日よりも後の場合は対象外になります。
「開業届は出したけれど、開業日を少し先の日付にしてしまった」というケースは実務でも見られます。申請前に、開業届に記載した開業日と申請日の前後関係を必ず確認してください。
なお、申請時点で商品・サービスの提供をまだ開始していない事業者(店舗オープン準備中、ECモールへの出店準備中など)であっても、補助対象になり得る場合があります。ただし、補助事業終了までに実際に事業活動を開始することが必要で、この要件を満たさないと補助金は交付されません。
一般型と創業型は重複申請できない
小規模事業者持続化補助金には<一般型 通常枠>と<創業型>があり、どちらも個人事業主が申請できますが、同時に重複して申請することはできません。また、<創業型>は過去に同補助金の<創業型>で採択・事業実施した事業者は、代表者を変更しても再度申請できないとされています。どちらの制度が自社の状況に合うか、事前に整理しておきましょう。
3補助率・補助上限額のおさらい
個人事業主が申請できる2つの制度について、補助率・補助上限額を簡単に整理します。
| 制度 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 一般型 通常枠(第20回公募) | 2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4) | 50万円(インボイス特例+50万円、賃金引上げ特例+150万円、両特例+200万円) |
| 創業型(第4回公募) | 2/3 | 200万円(インボイス特例+50万円) |
各特例の詳しい要件(適格請求書発行事業者の登録状況や賃金引上げの実績など)は公募要領によって細かく定められています。特例を希望する場合は、該当する宣誓・同意書や証明書類の提出が必要になりますので、公募要領の該当箇所を事前に確認しておきましょう。
4スケジュールは早めに把握しておく
| 公募要領公開 | 2026年5月27日 |
|---|---|
| 申請受付開始 | 2026年11月5日 |
| 申請受付締切 | 2026年12月15日17:00 |
| 事業支援計画書(様式4)発行の受付締切 | 2026年12月4日 |
事業支援計画書(様式4)の発行受付締切は、申請受付締切よりも前に設定されています。この締切以降は、いかなる理由があっても発行を受けられません。個人事業主の方は特に、確定申告書や開業届など他の書類の準備と並行して、早めに商工会・商工会議所への相談を始めることをおすすめします。
5必要書類で個人事業主がつまずきやすいポイント
現在事項全部証明書は不要、その代わりに開業届の写しが必要
法人の場合は「現在事項全部証明書」または「履歴事項全部証明書」の提出が求められますが、個人事業主の場合はこれらの提出は不要で、代わりに開業届の写しを提出します。注意したいのは、開業日が記載されていない開業届は無効とされる点です。控えを保管する際は、税務署の受付印とともに開業日欄がきちんと記載されているか確認しておきましょう。
確定申告書は「第一表・第二表」だけでは足りない
個人事業主が提出する確定申告書は、第一表・第二表に加えて、収支内訳書(1・2面)または所得税青色申告決算書(1〜4面)までをセットで提出する必要があります。第一表・第二表のコピーだけで提出を済ませてしまい、後から追加提出を求められるケースは少なくありません。
確定申告書にはマイナンバー(12桁の個人番号)が記載されていることがあります。提出書類にマイナンバーの記載がある場合は、番号が見えないよう黒塗りしてから提出してください。
開業したばかりで決算を一度も迎えていない場合の対応
開業して間もない個人事業主の場合、まだ一度も確定申告(決算)を終えていないことがあります。この場合は、通常必要な貸借対照表・損益計算書や確定申告書の提出に代えて、次のような代替書類を用意します。
- すでに事業活動を開始している場合:開業以降の売上が発生していることを証明する売上台帳等(任意書式)の写し
- まだ事業活動を開始していない場合:申請時点では提出不要とし、実績報告時に売上台帳等の写しを提出
また、確定申告書に代わる書類として、申請時点で開業していることがわかる開業届の写しも合わせて求められます。「決算をまだ迎えていないから出せる書類がない」とあきらめず、代替書類の案内を確認しましょう。
6商工会・商工会議所とのやり取りで気をつけたいこと
事業支援計画書(様式4)は代理人だけに任せられない
この補助金は、小規模事業者自身が商工会・商工会議所の支援を直接受けながら、経営計画や補助事業計画を策定することが前提になっています。そのため、社外の代理人だけで商工会・商工会議所への相談や事業支援計画書(様式4)の発行依頼を行うことはできません。第三者の支援を受ける場合でも、事業者本人が商工会・商工会議所とのやり取りに関わる必要があります。
発行には時間がかかる―締切直前の依頼はNG
事業支援計画書(様式4)の発行にあたっては、申請書に記載した代表者本人に計画内容を直接確認される場合があります。窓口によっては面談が必要なケースもあり、依頼してすぐに発行されるとは限りません。申請受付締切の直前に慌てて依頼すると、発行受付締切に間に合わず申請自体ができなくなるおそれがあるため、早めの相談を心がけてください。
7GビズIDプライムの取得は今すぐ始める
本補助金の申請は電子申請システムのみで受け付けており、申請には「GビズIDプライム」のアカウントが必要です。アカウントの取得には数週間程度かかる場合があるとされており、個人事業主の方でも法人同様に事前の登録が必須です。
すでにGビズIDを取得している場合も、登録情報が古いままだと交付決定後の手続きに支障が出ることがあります。申請前に登録情報を最新の状態に更新しておきましょう。
8創業間もない方は<創業型>の要件も確認しておきたい
開業して1年以内の個人事業主の方は、補助上限額が大きい<創業型>(第4回公募では補助上限200万円)への申請も検討できます。ただし、個人事業主ならではの追加要件があるため注意が必要です。
支援を受けた本人が代表者(個人事業主本人)であることが必須
<創業型>の申請要件は、「認定市区町村」または「認定連携創業支援等事業者」が実施した特定創業支援等事業による支援を受けた日、および開業日が、公募締切から起算して過去1か年の間であることです。個人事業主の場合、個人事業主本人がこの特定創業支援等事業による支援を受けていることが必要で、家族専従者や後継予定者など、本人以外の者が代わりに支援を受けた場合は対象外となります。
個人事業を法人化した場合の注意点
個人事業から法人化したうえで<創業型>に申請する場合、個人事業の開業日から1年を経過している場合は申請できないとされています。法人化のタイミングによっては対象外になる可能性があるため、開業日からの経過期間を必ず確認してください。
9その他、個人事業主が陥りやすい失敗
- 複数の屋号を使用している場合でも、同一受付締切回への応募は1件のみという点を見落とす
- 開業届の開業日欄の記載漏れに気づかないまま提出してしまう
- 交付決定日より前に発注・契約・支払いを済ませてしまい、補助対象外になる
- 確定申告書や開業届の控えを紛失しており、再発行に時間がかかる
- 第三者からの支援(有償・無償を問わず)を受けているのに、様式2の該当項目にその内容を記載しないまま申請してしまう
特に、交付決定前の発注・契約・支払いは補助対象外となる点は、法人・個人事業主を問わず多くの事業者が誤解しやすいポイントです。「採択通知書」が届いた段階ではまだ補助対象の経費支出はできず、その後に届く「交付決定通知書」に記載された交付決定日以降から対象となりますので、慌てて発注しないよう注意してください。
10よくある質問
決算(確定申告)を一度も迎えていない場合でも、事業活動を開始していることを証明する売上台帳等(任意書式)の写しなど、代替書類の提出によって申請できる場合があります。具体的にどの書類が必要かは、申請時点で事業活動を開始しているかどうかによって異なりますので、公募要領の必要書類一覧で確認しましょう。
小規模事業者の判定に使う「常時使用する従業員」には、同居の親族従業員は含まれません。日雇労働者や2か月以内の期間を定めて雇用する方なども対象外です。ご自身の事業がどの業種区分に該当し、従業員が何人としてカウントされるかを、公募要領の定義に沿って確認してください。
開業後1年以内で、特定創業支援等事業による支援を受けた方は<創業型>を検討できます。ただし両制度は重複申請ができないため、ご自身の開業時期や要件を照らし合わせて、どちらか一方を選ぶ必要があります。判断に迷う場合は専門家への相談も有効です。
11まとめ
小規模事業者持続化補助金は個人事業主も申請できる補助金ですが、開業日の確認、確定申告書の種類、決算を迎えていない場合の代替書類、商工会・商工会議所とのやり取りなど、法人とは異なる注意点が数多くあります。特に開業間もない個人事業主の方は、<創業型>の追加要件(支援を受けた本人が代表者であることなど)もあわせて確認しておくことが大切です。
公募要領は回ごとに内容が変わることがあるため、申請前には必ず最新の公募要領・公式サイトをご確認ください。そのうえで、必要書類の準備や要件の確認に不安がある場合は、早めに専門家へ相談することで、申請準備をスムーズに進めやすくなります。
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本記事の情報は公開時点(2026年10月)のものです。








