小規模事業者持続化補助金でIT導入と販路開拓を組み合わせる活用例の考え方
「ホームページを新しくしたい」「予約システムやPOSレジを導入したい」——そんなIT関連の投資を考えたとき、小規模事業者持続化補助金が使えるのか気になる方は多いのではないでしょうか。実は、この補助金はIT導入だけを目的にした申請はできません。この記事では、IT導入と販路開拓をどう組み合わせて申請を考えればよいか、ウェブサイト関連費の定義や注意点とあわせて解説します。
1小規模事業者持続化補助金とは(かんたんに)
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自ら策定した経営計画にもとづいて行う「販路開拓等の取組」を支援する補助金です。商工会・商工会議所の支援を受けながら申請する点が特徴で、対象者の要件や補助率の基本的な考え方は、別記事「小規模事業者持続化補助金とは?対象要件と補助率をわかりやすく解説」でまとめていますので、あわせてご覧ください。
この記事では、その中でも「IT導入」と「販路開拓」を組み合わせて申請を考えるときの基本的な考え方を取り上げます。参照している内容は、2026年5月27日公開の「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領」と、2026年3月公開の「第19回公募 参考資料」です。第20回公募用の参考資料は、2026年10月時点でまだ公開されていないため、業種の考え方や経費の読み替えなど、公募要領に書かれていない細かな内容は、第19回の参考資料を参考情報として使っています。最新の内容は、必ず事務局ホームページで公開される公募要領・参考資料でご確認ください。
商工会地区と商工会議所地区で事務局・申請窓口の連絡先が異なります。お手元の公募要領の表紙で、自社がどちらの地区に当たるかを確認しておきましょう。
2「IT導入」だけでは申請できない、という大前提
まず押さえておきたいのが、小規模事業者持続化補助金は「販路開拓等の取組」を支援する補助金であり、IT導入そのものを目的にした補助金ではない、という点です。システム開発やホームページ制作などのIT関連費用は「ウェブサイト関連費」という経費区分で申請できますが、ウェブサイト関連費だけでの申請は認められておらず、計上した経費がウェブサイト関連費のみになった場合は不採択(または補助対象外)になります。
つまり、「ホームページをリニューアルしたい」「予約システムを入れたい」という思いだけでは申請が成立せず、それが「どのように新しい販路の開拓につながるのか」を経営計画・補助事業計画の中で説明する必要があります。
ウェブサイト関連費の定義
ウェブサイト関連費は、ウェブサイトやシステムの開発・改修に関連する経費区分です。第20回公募要領では、対象となる経費例として、次のようなものが挙げられています。
- 自社ウェブサイトの新規作成・更新(商品販売のためのもの)
- 顧客管理システムの構築、業務用アプリケーションの開発
- 販路開拓等のための特定業務用ソフトウェア(設計用の3次元CADソフト、顧客管理ソフトなど)
- 効果や作業内容が明確なウェブサイトのSEO対策
- ECサイトに掲載する宣材写真や、商品・サービスを販売するための画像・動画の制作費用
一方で、ウェブサイトやシステムに関するコンサルティング・アドバイス費用、家庭・一般事務用のソフトウェア、既存ソフトウェアの更新料、販売を目的としたシステム・ソフトウェア開発などは対象外とされています。また、ウェブサイト関連費と広報費の経費区分には、それぞれ補助金交付申請額の上限30万円(税込)が設けられている点にも注意が必要です。
なお、申請内容にかかわらずウェブサイト関連費に読み替えられる経費について、第20回公募要領では、ウェブサイト、システム開発等に関連するソフトウェアは、③ウェブサイト関連費で計上してくださいとされているほか、自社ホームページや、ECサイトにて使用する動画や写真の制作費用等については、③ウェブサイト関連費にて計上してくださいと案内されています。
そのため、たとえば次のような経費は、名目上は広報費や委託・外注費のように見えても、ウェブサイト関連費として計上する必要があります。
- 自社ホームページやECサイトで使用する動画・写真の制作費用
- ウェブサイトやシステム開発に関連するソフトウェアの購入費用
このように「ウェブで使うもの・ウェブ上で公開するもの」は、名目が広報費や委託・外注費であっても、ウェブサイト関連費として扱われることがあります。経費を計上するときは、どの区分に当たるのか、公募要領の表で確認しておくことが大切です。
経費の区分の考え方は公募回によって変わることがあります。本記事は第20回公募要領(2026年10月6日公表)の内容にもとづいていますので、申請の際は必ず最新の公募要領でご確認ください。

3補助対象者の考え方(従業員数の要件)
小規模事業者持続化補助金の対象になるかどうかは、業種ごとに「常時使用する従業員の数」で判断されます。第20回公募要領では、次のように定められています。
| 業種区分 | 常時使用する従業員数の上限 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
「従業員が6人以上いるから対象外」と思い込む前に、自社の業種区分を確認しましょう。飲食店でも、流通性のあるお弁当や総菜を製造・販売している場合や、仕入れた商品に加工を施して新たな価値を加えて販売している場合などは「製造業その他」に当たる可能性があり、その場合は20人以下が基準になります。建設業・運送業など、業種の区分に当てはめにくい事業も「製造業その他」の基準(20人以下)で判断されることがあります。判断に迷う場合は、商工会・商工会議所や専門家に確認することをおすすめします。
4補助上限額・補助率(第20回公募)
第20回公募(通常枠)の補助上限額・補助率は次のとおりです。
| 補助率 | 2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4) |
|---|---|
| 補助上限額(通常) | 50万円 |
| インボイス特例 | 50万円上乗せ |
| 賃金引上げ特例 | 150万円上乗せ |
| 両特例を満たす場合 | 200万円上乗せ |
対象経費の区分は、機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費の8つです。IT導入に関する費用の多くは、このうち「ウェブサイト関連費」または「委託・外注費」(システム開発・導入の外注など)に当てはまります。特例の詳しい要件は公募要領に細かく定められているため、適用を希望する場合は公募要領の該当ページを必ず確認してください。
5第20回公募のスケジュール
| 公募要領公開 | 2026年5月27日 |
|---|---|
| 申請受付開始 | 2026年11月5日 |
| 申請受付締切 | 2026年12月15日 17:00 |
| 事業支援計画書(様式4)発行の受付締切 | 2026年12月4日 |
| 採択発表予定日 | 2027年3月頃(予定) |
事業支援計画書(様式4)は、商工会・商工会議所に発行を依頼する書類で、発行には時間がかかる場合があります。受付締切以降は、いかなる理由があっても発行を受けられないため、早めに相談を始めることが大切です。スケジュールは変更される可能性もあるため、必ず最新の公募要領で確認してください。
6IT導入と販路開拓を組み合わせる、具体的な考え方
ここからが本題です。IT関連の投資を「販路開拓の取組」として申請するには、どのような考え方をすればよいのでしょうか。公募要領・参考資料に示されている取組例をもとに整理します。
IT導入は「販路開拓の手段」として位置づける
公募要領では、補助対象となる販路開拓等の取組の例として、新たな販促用チラシの作成・送付、国内外の展示会・見本市への出展、新商品の開発、店舗改装などが挙げられています。ここに「ウェブサイトの新規作成」「ECサイトの開設」「予約システムの導入」などを組み合わせ、「新しい顧客層に、新しい方法でアプローチする」という形にすることで、IT投資が販路開拓の取組として位置づけられます。
たとえば、次のような組み合わせ方が考えられます(あくまで一般的な取組の方向性であり、必ず採択されることを保証するものではありません)。
- 新規顧客層の獲得を目的にECサイトを開設し、あわせてWeb広告・SNS広告を実施する
- 非対面での販路開拓として予約システムやモバイルオーダーを導入し、ポスティング広告やDM広告で来店を促す
- 店舗改装で新しい商品棚・陳列を整えるとともに、ホームページを更新して新商品の情報を発信する
重要なのは、「IT導入によって、どのような新しい顧客に、どのような形でアプローチできるのか」を経営計画・補助事業計画の中で具体的に説明することです。審査では、経営方針・目標と今後のプランが、自社の強み・弱みや、対象とする市場・顧客のニーズを捉えたものになっているか、売上高・売上総利益の増加を目指すものになっているかが見られます。

業務効率化(IT利活用)は「副次的な取組」という位置づけ
公募要領・参考資料では、販路開拓とあわせて行う「業務効率化(生産性向上)」の取組も補助対象になるとされています。この中には「IT利活用」として、倉庫管理システム、労務管理システム、POSレジソフト、経理・会計ソフトの新規導入などが例として挙げられています。
ただし、業務効率化の取組はあくまで副次的な位置づけで、記載がなくてもよいとされており、業務効率化の記載があることで補助上限額が引き上がることもありません。そして最も重要な点として、「販路開拓等」の記載がなく、「業務効率化」だけでは申請できないとされています。POSレジソフトの導入のように、業務効率化の記載がある場合に限り計上できる経費もあるため、どちらの取組として計画するかを整理しておきましょう。
「システムを入れて業務を楽にしたい」という目的だけでは、補助対象として認められない場合があります。そのシステム導入が、どのように新しい販路の開拓(売上の増加)につながるのかを、必ずセットで説明することが大切です。
7よくある失敗・注意点
- ウェブサイト関連費だけで計画を組んでしまう:ホームページ制作やシステム開発だけで経費を組んでしまうと、不採択(または補助対象外)になります。広報費や機械装置等費など、他の経費とあわせて申請する計画にしましょう。
- 「不動産の取得」に該当する工事を見落とす:店舗改装とあわせてIT設備を導入する場合、建物の増築やコンテナハウス等の設置が「不動産の取得」に当たると判断されると、その部分は補助対象外になります。外気分断性・土地への定着性・用途性の3要件を満たすかどうかは、事前に公募要領で確認しておきましょう。
- 交付決定前に発注・契約してしまう:補助対象となる経費の発注・契約・支払いは、交付決定日以降に行う必要があります。採択通知を受け取っただけで発注してしまうと、補助対象外になるため注意してください。
- 収益納付の対象になる取組を見落とす:補助金で構築した買い物カゴ・決済機能付きの自社ネットショップやECモールでの販売など、補助事業で直接生じた収益がある場合は、補助金交付額から相当額が減額されることがあります(収益納付)。「補助金で利益が出る」といった考え方は避け、該当する場合は申請時に正しく記載しましょう。
8よくある質問
できません。ウェブサイト関連費のみでの申請は認められておらず、経費がウェブサイト関連費だけになった場合は不採択(または補助対象外)になります。広報費や展示会出展費など、他の販路開拓の取組とあわせて計画する必要があります。
業種区分によっては対象になる可能性があります。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は5人以下が基準ですが、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下が基準です。自身で製造・加工した商品を販売している場合や、業種の区分が判断しにくい事業は「製造業その他」の基準が使われることもあるため、商工会・商工会議所や専門家に確認してみましょう。
ウェブサイト関連費として計上できる場合がありますが、POSソフトについては、補助事業計画の「業務効率化(生産性向上)の取組内容」に記載した場合に限り対象となるなど、細かい条件があります。公募要領の経費区分の説明を確認し、不明な点は事務局や商工会・商工会議所に相談しましょう。
9まとめ
小規模事業者持続化補助金でIT導入を検討する場合、大切なのは「IT導入そのものを目的にしない」という視点です。ウェブサイト関連費だけでの申請はできないため、ホームページ制作やシステム導入は、広報費・展示会出展費・店舗改装費などの他の販路開拓の取組と組み合わせ、「新しい顧客にどうアプローチするのか」をセットで経営計画に落とし込む必要があります。業務効率化のためのIT利活用は、あくまで販路開拓とあわせて行う副次的な取組という位置づけである点も押さえておきましょう。
この記事で紹介した内容は、2026年5月27日公開の第20回公募要領と、2026年3月公開の第19回参考資料にもとづくものです。第20回公募用の参考資料が公開された際は、内容が変わる可能性があるため、申請を検討される際は、必ず事務局ホームページで最新の公募要領・参考資料をご確認ください。
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本記事の情報は公開時点(2026年10月)のものです。








