小規模事業者持続化補助金の加点項目一覧|採択率アップのコツ
小規模事業者持続化補助金は、申請すれば必ず採択される制度ではなく、審査によって優劣が付けられる「競争型」の補助金です。その審査の中で採択の可能性を後押ししてくれるのが「加点項目」です。この記事では、小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>の加点項目の全体像と、混同しやすい「特例」との違いを、2026年10月時点で公表されている第20回公募要領(2026年5月27日版)をもとに整理します。
1採択の仕組みをおさらい:審査は3段階
加点項目を理解する前に、まず審査の流れを押さえておきましょう。小規模事業者持続化補助金の採択審査は、おおむね次の3段階で行われます。
- 基礎審査:提出書類がそろっているか、補助対象者・補助対象事業の要件を満たしているかなど、最低限の条件を確認する審査です。ここで要件を満たさないと、その時点で失格になります。
- 計画審査:経営計画・補助事業計画の内容そのものを評価する審査です。自社分析の妥当性や、売上高・売上総利益の増加が見込めるかといった点が見られます。
- 加点審査:ここで初めて「加点項目」が登場します。政策的な観点から、特定の条件に当てはまる事業者に加点を行い、計画審査までの評価と合わせて、総合的な評価の高い順に採択者を決めていきます。
つまり加点項目は、計画の中身そのものを良くするものではなく、「どちらを採択するか迷ったときに有利になる」ための仕組みだとイメージすると分かりやすいです。経営計画の内容がおろそかなまま加点だけ積み上げても、計画審査で評価されなければ採択にはつながりません。
2まず区別したい「特例」と「加点項目」の違い
小規模事業者持続化補助金の公募要領を読んでいると、「インボイス特例」「賃金引上げ特例」といった言葉と、「経営力向上計画加点」「事業承継加点」といった言葉が並んで出てきます。どちらも申請画面の同じような場所(様式2「希望する特例及び加点項目」)で選択するため、同じようなものだと思われがちですが、性質はまったく異なります。
| 区分 | 何に影響するか | 具体例 | 要件を満たせなかった場合 |
|---|---|---|---|
| 特例 | 補助上限額・補助率そのもの | インボイス特例、賃金引上げ特例 | 実績報告時点で要件を満たさないと、上乗せ部分だけでなく補助金全体が交付されない場合があります |
| 加点項目 | 採択審査での評価(順位) | 経営力向上計画加点、事業承継加点、過疎地域加点など | 加点を受けられないだけで、採択審査自体が失格になるわけではありません |
特例は「補助金の金額を増やす・補助率を上げる」仕組みであるのに対し、加点項目は「採択されやすくする」仕組みです。特例は実績報告の時点で要件を満たせないと補助金そのものが交付されなくなるリスクがあるため、無理に希望しないことも大切です。

特例とは(補助上限額・補助率が変わる)
第20回公募要領(一般型 通常枠)によると、通常枠の補助上限は50万円ですが、次の特例に該当すると上乗せされます。
| 通常枠(基本) | 補助上限50万円、補助率2/3 |
|---|---|
| インボイス特例 | 50万円上乗せ(要件を満たす場合) |
| 賃金引上げ特例 | 150万円上乗せ。さらに赤字事業者は補助率が2/3から3/4に引き上がる |
| 両特例を満たす場合 | 200万円上乗せ |
特例はいずれも「補助事業終了時点で要件を満たしていること」が前提です。公募要領には、要件を1つでも満たさない場合は「特例による上乗せ部分のみではなく全体が交付対象外となります」と明記されています。希望する際は、実績報告の時点まで見据えて無理のない計画にすることが重要です。
加点項目とは(採択の順位が有利になる)
一方の加点項目は、補助金額を増やすものではなく、採択審査の中で評価を上乗せしてもらえる仕組みです。第20回公募要領では、加点は「重点政策加点」と「政策加点」のそれぞれから1種類ずつ、合計2種類まで選択できるとされています。
重点政策加点・政策加点からそれぞれ1種類ずつ、合計2種類までしか選べません。同じ区分から2種類以上選んでしまうと、その申請は加点審査の対象外になってしまいます。申請前に「重点政策加点1つ+政策加点1つ」になっているか必ず確認しましょう。
3特に紛らわしい「賃金引上げ特例」と「賃金引上げ加点」
加点項目の中でも特に混同しやすいのが、「賃金引上げ特例」と「賃金引上げ加点」です。名前が似ているうえ、どちらも給与支給総額の引き上げを条件にしていますが、位置づけも引き上げ率の基準もまったく異なります。
| 項目 | 賃金引上げ特例 | 賃金引上げ加点(政策加点) |
|---|---|---|
| 位置づけ | 特例(補助上限額・補助率に影響) | 加点(採択審査の評価に影響) |
| 効果 | 補助上限に150万円上乗せ。赤字事業者はさらに補助率が2/3→3/4へ | 採択審査時に政策的な観点から加点 |
| 給与支給総額の引き上げ目標 | 従業員1人あたり給与支給総額を年平均3.0%以上増加 | 従業員1人あたり給与支給総額を年平均2.0%以上増加 |
| 未達成だった場合 | 補助金が交付されない(上乗せ分だけでなく全体) | 採択審査の加点が得られないにとどまる(交付自体への影響は公募要領・交付規程でご確認ください) |
第20回公募要領では、「賃金引上げ特例を希望した場合、賃上げ加点が自動的に適用される」とされています。つまり賃金引上げ特例(3.0%以上)を選ぶと、政策加点の「賃金引上げ加点」もセットで付与される仕組みです。さらに赤字事業者が賃金引上げ特例を選んだ場合は、重点政策加点の「赤字賃上げ加点」も自動的に適用されます。
逆に言えば、「賃上げまでは難しいが、2.0%の賃金引上げ加点だけを単独で狙いたい」という場合は、政策加点の「①賃金引上げ加点」を単独で選ぶことも可能です。この場合は補助上限額は変わりませんが、採択審査では有利になります。どちらを選ぶかは、自社の賃上げ計画の実現可能性と相談しながら慎重に判断しましょう。

4加点項目の全体像(第20回・一般型 通常枠)
第20回公募要領に記載されている加点項目は、「重点政策加点」5種類、「政策加点」11種類です。繰り返しになりますが、選べるのはそれぞれから1つずつ、合計2つまでです。
重点政策加点(この中から1つまで)
- 赤字賃上げ加点:賃金引上げ特例(赤字事業者)を選択した場合に自動的に適用されます
- 事業環境変化加点:物価高騰等の影響を受けている内容を入力します
- 東日本大震災加点:福島県12市町村に事業実施場所がある事業者、または太平洋沿岸部の水産仲買業者・水産加工業者が対象です
- くるみん・えるぼし加点:基準適合一般事業主認定通知書の写しが必要です
- 健康経営優良法人加点:GビズIDに登録された情報と認定情報をもとに自動判定されます
政策加点(この中から1つまで)
- 賃金引上げ加点:従業員1人あたり給与支給総額を年平均2.0%以上増加させる計画(前述のとおり賃金引上げ特例を選ぶと自動付与)
- 地方創生型加点:地域資源型、または地域コミュニティ型の取組計画が対象です
- 経営力向上計画加点:「経営力向上計画」の認定書の写しが必要で、基準日までに認定を受けている必要があります
- 事業承継加点:代表者の年齢や後継者候補の実在確認、商工会・商工会議所が発行する「事業承継診断票」(様式10)などが必要です
- 過疎地域加点:過疎地域に所在する事業者が対象です
- 一般事業主行動計画策定加点:厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」または「両立支援のひろば」に掲載されたURLの入力が必要です
- 後継者支援加点:「アトツギ甲子園」のファイナリストまたは準ファイナリストになった事業者が対象です
- 小規模事業者卒業加点:小規模事業者の従業員基準(商業・サービス業で6人以上など)を超えて事業規模を拡大する計画のある事業者向けです
- 事業継続力強化計画策定加点:申請受付締切日までに認定を受け、実施期間が終了していないことが必要です
- 令和6年能登半島地震等に伴う加点:石川県・富山県・新潟県・福井県に事業実施場所があり、直接被害または間接被害(売上減少)が確認できる事業者が対象です
- 地域別最低賃金引上げ加点:地域別最低賃金の引き上げに対応した事業場内最低賃金の状況に基づく加点です
加点項目の名称や要件、必要書類は公募回ごとに見直されることがあります。この記事は第20回公募要領(2026年5月27日版)の内容をもとにしていますが、申請の際は必ず事務局ホームページで最新の公募要領をご確認ください。
5代表的な加点項目のつまずきやすいポイント
経営力向上計画の認定を受けていることが条件ですが、「基準日までに認定を受けていること」が必須です。基準日よりあとに認定を受けた場合や、申請中の段階では加点の対象になりません。経営力向上計画の認定には一定の期間がかかるため、加点を希望する場合は早めに申請しておく必要があります。
代表者の年齢を確認できる公的書類、後継者候補の実在確認書類に加えて、商工会・商工会議所が発行する「事業承継診断票」(様式10)が必要です。この様式10は、事業支援計画書(様式4)の発行依頼と同時に窓口へ依頼する必要があるため、申請直前にまとめて動こうとすると間に合わないことがあります。似た名前の「後継者支援加点」は、商工会・商工会議所ではなく「アトツギ甲子園」のファイナリスト・準ファイナリストが対象という、まったく別の加点です。混同しないよう注意しましょう。
自社の所在地が「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」に定める過疎地域・みなし過疎地域・一部過疎地域に該当するかどうかで判定されます。市区町村単位でも区域内の一部のみが該当するケースがあるため、自己判断せず、総務省の該当地域一覧や商工会・商工会議所に確認してから選択することをおすすめします。
従業員数が小規模事業者の基準(商業・サービス業で6人以上など)を超えている事業者向けの加点です。ただし、この加点で採択された事業者は、今後の小規模事業者持続化補助金(通常枠)に再度申請できなくなる点に注意が必要です。労働基準法に基づく労働者名簿の提出が、申請時だけでなく実績報告時にも求められる、数少ない「交付後にも書類提出が必要な加点」でもあります。
6加点項目選びでよくある失敗・注意点
- 重点政策加点・政策加点をそれぞれ2つ以上選んでしまい、加点審査の対象外になってしまう
- 「賃金引上げ特例」と「賃金引上げ加点」を混同し、3.0%の計画を立てたつもりが2.0%の加点基準で止まってしまう(逆に、特例のつもりで2.0%の計画しか立てておらず、特例の実績報告時に未達になる)
- 経営力向上計画や事業継続力強化計画の認定が、公募回ごとの基準日・申請受付締切に間に合わない
- 事業承継加点に必要な「事業承継診断票」(様式10)を、事業支援計画書(様式4)の発行依頼と別のタイミングで動いてしまい、時間切れになる
- 加点だけを積み上げることに力を入れすぎて、肝心の経営計画・補助事業計画の中身(計画審査で評価される部分)がおろそかになる
加点項目は、あくまで計画審査までの評価に上乗せされるものです。加点を集めることだけに気を取られず、自社の強み・弱みの分析や、売上高・売上総利益の増加につながる具体的な取組内容をしっかり作り込むことが、採択率を上げるための土台になります。
7まとめ
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>の加点項目は、「重点政策加点」5種類、「政策加点」11種類から、それぞれ1つずつ合計2つまで選べる仕組みです。補助上限額・補助率そのものを変える「特例」(インボイス特例・賃金引上げ特例)とは性質が異なり、採択審査での評価を有利にするためのものだと理解しておくと、申請書類を整理しやすくなります。特に「賃金引上げ特例(3.0%)」と「賃金引上げ加点(2.0%)」のように、名前が似ていても基準が異なるものもあるため、様式2に入力する前に、自社がどちらを目指すのかを整理しておきましょう。制度の数値や要件は公募回ごとに変わることがあるため、申請の際は必ず最新の公募要領・参考資料を事務局ホームページでご確認ください。
小規模事業者持続化補助金の基本的な対象要件や補助率については、別記事「小規模事業者持続化補助金とは?対象要件と補助率をわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。
本記事の情報は公開時点(2026年10月)のものです。








