小規模事業者持続化補助金の賃上げ加点・特例|最大150万円上乗せの条件
小規模事業者持続化補助金には、賃上げに取り組む事業者を後押しする仕組みが複数用意されています。なかでも「賃金引上げ特例」は、条件を満たせば補助金の上限額が150万円も引き上がる、見逃せない制度です。この記事では、2026年10月時点で公開されている第20回公募の公募要領をもとに、賃上げに関する特例・加点の内容、対象となる従業員の要件、注意点をわかりやすく整理します。
1小規模事業者持続化補助金における「賃上げ」の制度は2つある
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>では、「賃上げ」に関連する制度が大きく分けて2つあります。混同しやすいので、まず整理しておきましょう。
- 賃金引上げ特例:補助金の上限額そのものが150万円上乗せされる特例。赤字事業者はさらに補助率も引き上がります。
- 賃金引上げ加点:採択審査で有利になる「政策加点」の1つ。補助上限額は上がりませんが、採択されやすくなります。
このほかに、地域の最低賃金に近い水準で雇用している事業者向けの「地域別最低賃金引上げ加点」という政策加点もあります。それぞれ要件が異なるため、順番に見ていきましょう。
加点項目全体の種類や選び方については、加点項目一覧と採択率アップのコツで一覧を整理しています。
この記事は、小規模事業者持続化補助金の基本的な対象者・補助率について解説した記事(小規模事業者持続化補助金とは?対象要件と補助率をわかりやすく解説)の内容を前提にしています。制度の全体像をまだ確認していない方は、あわせてご覧ください。
2賃金引上げ特例:補助上限が150万円アップする重要な特例
「賃金引上げ特例」は、小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>の特例のなかでも、上乗せ額が最も大きい制度です。第20回公募(2026年11月5日受付開始、2026年12月15日17:00締切)の公募要領では、以下のとおり整理されています。
| 補助上限額(通常枠) | 50万円 |
|---|---|
| 賃金引上げ特例の上乗せ額 | +150万円(合計200万円) |
| 補助率 | 原則2/3(賃金引上げ特例かつ赤字事業者は3/4) |
| 賃上げの条件 | 従業員1人あたり給与支給総額を、年平均3.0%以上増加させる計画があること |
さらにインボイス特例(50万円上乗せ)もあわせて満たす場合は、通常枠50万円に両特例分200万円が上乗せされ、最大250万円まで補助上限が広がります。賃上げを検討している事業者にとって、この150万円の上乗せは非常に大きなインパクトがあります。
賃上げの比較期間
第20回公募では、2027年4月1日から補助事業実施期限日(2028年3月31日)までの12か月と、その前年同月の12か月を比較して、1人あたり給与支給総額の年平均上昇率を算出します。申請者自身で「1人あたり給与支給総額目標値」を設定し、採択後交付決定までに全従業員または従業員代表者・役員に表明したうえで、実績報告の時点で目標を達成している必要があります。
対象となる従業員の要件(必ず確認)
賃金引上げ特例でいう「従業員」は、小規模事業者の要件(常時使用する従業員5人以下・20人以下など)でいう「常時使用する従業員」とは定義が異なります。申請時に混同しやすいポイントなので、必ず確認してください。
- 非常勤(パート・アルバイト)を含む
- 代表者、役員、専従者は含まない
- 比較する2つの12か月の期間について、それぞれ全月分の給与等の支給を受けた従業員のみが算出対象(中途採用者・退職者など、いずれかの期間で全月分の支給を受けていない従業員は対象から除外)
- パートタイム従業員は、正社員の所定労働時間に換算した人数で算出する
- 産前・産後休業、育児休業、介護休業などで時短勤務をしている従業員は、算出対象から除くことができる
- 昇給・減給、残業時間の増減による給与変動がある従業員も算出対象に含める

また、比較対象期間を通じて、事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上であることも要件とされています。給与支給総額には、給料・賃金・残業代・賞与等を含みますが、福利厚生費・法定福利費・退職金は含まれません。
賃金引上げ特例は、補助事業終了時点で要件を満たしている必要があります。実績報告の時点で目標の賃上げ率を達成できていなかった場合、上乗せ部分だけでなく補助金全体が交付されません。賃上げの計画は、無理のない範囲で現実的に立てることが大切です。
赤字事業者はさらに補助率が3/4へ
賃金引上げ特例に取り組む事業者のうち、直近1期(法人)または直近1年間(個人事業主)の課税所得金額がゼロ以下、つまり赤字の場合は、補助率が2/3から3/4に引き上がります。あわせて、採択審査では「赤字賃上げ加点」という重点政策加点も自動的に適用され、優先的に採択される仕組みになっています。業績が厳しいなかでも賃上げに取り組む事業者を強く後押しする設計といえます。
法人の場合は直近1期の法人税申告書の別表一・別表四の写し、個人事業主の場合は直近1年分の確定申告書第一表の写しが、追加の提出書類として必要です。
3賃金引上げ加点:採択の可能性を高める政策加点
補助上限額には影響しませんが、採択審査で有利になる「賃金引上げ加点」という政策加点もあります。賃金引上げ特例とは別の制度なので、条件も分けて確認しておきましょう。
| 制度 | 賃上げ率の条件 | 効果 |
|---|---|---|
| 賃金引上げ特例 | 年平均3.0%以上 | 補助上限が150万円上乗せ(赤字なら補助率3/4) |
| 賃金引上げ加点(政策加点) | 年平均2.0%以上 | 採択審査で加点(補助上限額の変更なし) |
賃金引上げ加点は、2027年4月1日から補助事業実施期限日までの12か月とその前年同月の12か月を比較し、1人あたり給与支給総額を年平均2.0%以上増加させる計画を立てることが条件です。対象となる従業員の考え方(非常勤を含み、代表者・役員・専従者は除くなど)は、賃金引上げ特例とほぼ共通しています。こちらも、実績報告時点で目標を達成できなかった場合は補助金が交付されない点に注意してください。
採択審査における加点は「重点政策加点」「政策加点」からそれぞれ1種類ずつ、合計2種類までしか選べません。賃金引上げ加点を含め、どの加点を組み合わせるかは事業計画全体とのバランスで検討する必要があります。
4地域別最低賃金引上げ加点にも触れておきたい
このほか、事業場内で働く従業員の賃金が地域別最低賃金に近い水準にある事業者が、その賃金を引き上げた場合に採択審査で加点される「地域別最低賃金引上げ加点」という政策加点もあります。対象となる従業員の賃金台帳(連続する3か月分)や雇用条件が分かる書類の提出が必要で、対象期間の考え方は最低賃金の改定時期によって異なります。こちらも補助上限額を直接引き上げる制度ではなく、採択審査上の加点である点は賃金引上げ加点と同じです。詳細な要件は、公募要領の該当箇所で必ず確認してください。
5賃上げに関する特例・加点のまとめ
| 制度名 | 種類 | 主な条件 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 賃金引上げ特例 | 補助上限の特例 | 年平均3.0%以上の賃上げ計画 | 補助上限+150万円(赤字は補助率3/4) |
| 賃金引上げ加点 | 政策加点 | 年平均2.0%以上の賃上げ計画 | 採択審査で加点 |
| 地域別最低賃金引上げ加点 | 政策加点 | 事業場内最低賃金の引上げ実績 | 採択審査で加点 |
| 赤字賃上げ加点 | 重点政策加点 | 賃金引上げ特例かつ赤字事業者 | 優先的に採択(自動適用) |
こうして並べてみると、賃金引上げ特例は「補助上限そのものを150万円引き上げる」唯一の制度であり、賃上げを検討している事業者にとって最優先で検討する価値がある仕組みだとわかります。すでに賃上げを計画している、あるいは最低賃金の上昇に合わせて給与水準の見直しを考えている事業者は、この特例の活用をぜひ検討してみてください。
6申請の流れとスケジュール(第20回公募)
賃金引上げ特例を希望する場合も、申請の基本的な流れは通常枠と同じです。第20回公募のスケジュールは以下のとおりです。
| 公募要領公開 | 2026年5月27日 |
|---|---|
| 申請受付開始 | 2026年11月5日 |
| 事業支援計画書(様式4)発行の受付締切 | 2026年12月4日 |
| 申請受付締切 | 2026年12月15日 17:00 |
| 採択発表予定日 | 2027年3月頃(予定) |
賃金引上げ特例を希望する場合は、申請時に電子申請システムの「賃金引上げ特例の希望」を選択し、「賃金引上げ特例・賃金引上げ加点の申請に係る誓約・同意書(様式7)」にチェックします。採択後は、給与支給総額基準値の算定情報の入力や、採択発表日を含む月を終点とした連続12か月分の賃金台帳の写し、雇用条件(所定労働時間・年間休日)が分かる書類の提出が必要になります。実績報告時にも、補助事業実施期限日を終点とした12か月分の賃金台帳の写しなどの提出が求められます。
賃金台帳と給与台帳は異なる書類です。労働基準法で定められた記載事項(労働日数、労働時間数、時間外労働の時間数など)を満たした賃金台帳を準備してください。
7よくある失敗・注意点
賃金引上げ特例・加点でいう「1人あたり給与支給総額」は、比較対象となる2つの12か月の期間の両方で、全月分の給与等の支給を受けた従業員だけを対象に算出します。年度の途中で入社・退職した従業員は、その期間の算出対象から外れる点に注意してください。
対象になります。ただし、正社員の所定労働時間に換算した人数で計算する必要があります。たとえば正社員が週35時間勤務の職場で、週15時間勤務のパート従業員がいる場合、0.42人として扱います。
賃金引上げ特例・賃金引上げ加点とも、実績報告の時点で目標の賃上げ率を達成できていない場合は、補助金が交付されません(賃金引上げ特例の場合は、上乗せ分だけでなく補助金全体が対象外となります)。申請時には、実現可能な賃上げ計画を立てることが重要です。
異なります。「常時使用する従業員」は、小規模事業者であるかどうかを判定するための人数(5人以下・20人以下など)に使う考え方で、日雇い・2か月以内の期間雇用・会社役員・同居親族などを含めません。一方、賃上げの特例・加点でいう「従業員」は、非常勤を含み、代表者・役員・専従者を除くという別の基準で判定します。混同しないよう注意してください。
8まとめ
小規模事業者持続化補助金には、賃上げに取り組む事業者向けに「賃金引上げ特例」「賃金引上げ加点」「地域別最低賃金引上げ加点」という複数の制度が用意されています。なかでも賃金引上げ特例は、年平均3.0%以上の賃上げ計画によって補助上限額を150万円引き上げられる、非常に効果の大きい制度です。赤字事業者であれば補助率も3/4に引き上がり、優先的な採択も期待できます。
一方で、対象となる従業員の数え方や、実績報告時の達成要件など、通常枠だけの申請に比べて確認すべき項目が増えるのも事実です。賃上げを検討している場合は、自社の従業員構成や給与体系が条件に合うかどうかを早めに確認しておくことをおすすめします。制度の数値・要件は公募回ごとに変わる可能性があるため、申請前には必ず最新の公募要領をご確認ください。
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本記事の情報は公開時点(2026年10月)のものです。








