持続化補助金が不採択・不交付になるケースと見直すべき書類
小規模事業者持続化補助金は、申請すれば必ず通るものではありません。審査の結果「不採択」となる場合もあれば、採択されたあとに交付決定前の手続きミスや実績報告の不備によって、補助金が「交付されない」「取消になる」こともあります。本記事では、公募要領・交付規程をもとに、不採択・不交付になりやすいケースと、申請前に見直すべき書類のポイントを整理します。再申請を検討している方は、過去の申請で何が足りなかったのかを確認する参考にしてください。
1「不採択」には実は2つのタイミングがある
持続化補助金における「不採択」という言葉は、実は2つの場面で使われます。1つは、審査の結果そもそも採択されない場合です。もう1つは、いったん採択されたあとに、交付決定前の見積書提出や手続きの不備、あるいは実績報告の段階での要件未達によって、補助金が交付されない、または採択・交付決定が取り消されるケースです。
弊社にご相談いただく事業者さまの中には、「採択されたのに、結局お金がもらえなかった」という方もいらっしゃいます。これは審査段階の不採択とは原因が異なるため、再申請や今後の手続きを考えるうえで、どちらのパターンに当てはまるのかを整理しておくことが大切です。
本記事は、小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>の交付規程(第20回公募時点)および、持続化補助金の一般的な申請要件の考え方をもとに構成しています。公募回によって要件・金額・期限は変わりますので、実際に申請する際は必ず最新の公募要領をご確認ください。
2審査で不採択になりやすい主な理由
審査段階での不採択は、大きく分けて「申請要件そのものを満たしていない」ケースと、「要件は満たしているが、書類の記載内容や手続きに不備がある」ケースに分かれます。まずは要件面でつまずきやすいポイントから見ていきましょう。
小規模事業者の要件を満たしていない
持続化補助金は「小規模事業者」であることが大前提です。業種ごとに、常時使用する従業員数の基準が次のように定められています。
| 業種区分 | 常時使用する従業員数の基準 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
ここで注意したいのは、「常時使用する従業員」の数え方です。日雇いや2か月以内の期間雇用、季節雇用、試用期間中の人、会社役員や同居の親族は、原則としてこの人数に含みません。自社の業態がどの業種区分に当てはまるのか、また実際に数えるべき従業員が何人なのかを誤ると、本来は対象になるはずの事業者が「要件を満たさない」と判断されてしまったり、逆に対象外なのに申請してしまったりすることがあります。
「自ら流通性のある商品を製造・加工している」場合は、店舗での接客が中心でも【製造業その他】に区分されることがあります。業種区分の判断に迷う場合は、自己判断せずに商工会・商工会議所や専門家に確認しましょう。
対象外の事業者・事業に該当している
持続化補助金には、そもそも申請の対象にならない事業者・事業の類型があります。代表的なものは次のとおりです。
- 医師・歯科医師・助産師、医療法人、介護事業者など
- 一般社団・財団法人、宗教法人、学校法人、農事組合法人、社会福祉法人などの各種法人
- 申請時点で開業していない創業予定者、任意団体
- マージャン店・パチンコ店・ゲームセンター・性風俗関連特殊営業等
- 資本金または出資金5億円以上の法人に、直接・間接に100%の株式を保有されている事業者
- 国の他の制度(介護報酬・保険診療報酬が適用されるサービスなど)と同一・類似の事業
- 事業終了後、概ね1年以内に売上げにつながることが見込まれない事業
こうした対象外要件は、申請者自身が気づかずに該当しているケースも少なくありません。たとえば「保険診療と自由診療を両方扱っているので大丈夫だと思っていた」「NPO法人だが収益事業の要件を満たしていなかった」など、思い込みで申請してしまい不採択になる例もあります。申請前に、自社の事業がどの区分に当たるのかを客観的にチェックしておくことが重要です。
商工会・商工会議所の手続きが間に合っていない
持続化補助金の申請には、地域の商工会・商工会議所が発行する「事業支援計画書」の添付が必要です。この書類は、申請直前に依頼してすぐ発行されるものではなく、内容の確認や相談を経て発行されるため、一定の時間がかかります。
発行の受付締切は、申請の締切より前に設定されているのが通例です。「経営計画書の作成に時間がかかり、商工会への相談が締切ギリギリになってしまった」という理由で、事業支援計画書の発行が間に合わず申請自体ができなかった、という相談も少なくありません。申請を考え始めた段階で、早めに商工会・商工会議所へ相談のアポイントを取ることをおすすめします。
過去の採択状況による制限
過去に持続化補助金(一般型・コロナ特別対応型・低感染リスク型ビジネス枠などを含む)で採択を受け、補助事業を実施したことがある場合、再度の申請には一定の制限がかかることがあります。たとえば、補助事業の完了から一定期間が経過していることや、事業効果等の報告書の提出から一定期間が経過していることが条件になる場合や、「卒業枠」「後継者支援枠」など特定の枠で採択された場合は、通常枠への再申請ができないといった制限です。
過去に採択実績がある事業者の方が再申請を検討する場合は、自分がどの枠で採択されたか、報告書類の提出は完了しているかを、まず確認しておきましょう。具体的な制限内容は公募回によって変わることがあるため、最新の公募要領でのご確認をおすすめします。
3採択後に「交付されない」「取消になる」ケース
ここからが、見落とされがちな重要なポイントです。持続化補助金は、「採択通知書」が届いた時点ではまだ補助金を受け取る権利が確定したわけではありません。その後の「交付決定」、そして事業完了後の「実績報告」「補助金額の確定」という手続きを経て、はじめて補助金が支払われます。この間の手続きに不備があると、採択されていても補助金が交付されない、あるいは採択・交付決定そのものが取り消されることがあります。

交付決定前に発注・契約・支払をしてしまう
補助対象となる経費の発注・契約・支払いは、交付決定通知書に記載された交付決定日以降でなければ認められません。採択通知を受け取った段階で「もう始めていい」と誤解して発注してしまうと、その経費は補助対象外になってしまいます。
採択発表から交付決定までは、詳細な見積書等が速やかに提出された場合でも概ね1〜2か月程度かかることがあるとされています。スケジュールに余裕を持って計画を立て、「採択通知書」と「交付決定通知書」は別物であることを、社内で必ず共有しておきましょう。
特例(インボイス・賃金引上げ)の要件を満たせなかった
補助上限額を引き上げるインボイス特例・賃金引上げ特例を選択した場合、実績報告の時点でその要件を満たしていないと判断されると、上乗せ部分だけでなく、通常枠を含めた補助金全体が交付されないことがあります。
- インボイス特例:補助事業終了時点で適格請求書発行事業者の登録を受けていることが条件です。
- 賃金引上げ特例:従業員の賃金引上げについて、定められた基準(事業場内最低賃金の引上げ額など)を達成できなかった場合、補助金は交付されません。
「計画段階では賃上げするつもりだったが、業績の見通しが変わり実現できなかった」というケースは実務上起こり得ます。特例を選ぶかどうかは、実現可能性を慎重に見極めたうえで判断することが大切です。
実績報告書の提出が遅れる・不備がある
補助事業が完了したら、定められた期限までに実績報告書と証拠書類(見積書・請求書・領収書等)を提出する必要があります。期限内に実績報告書の提出が確認できない場合、交付決定が取り消されることがあります。また、証拠書類が不足していて支出内容が確認できない経費は、補助対象外として減額される可能性もあります。
「レシートを紛失してしまった」「相見積もりを取っていなかった」といった些細な抜け漏れが、確定額の減額につながることも珍しくありません。経費を使う段階から、領収書・請求書・契約書・見積書を一式セットで保管しておく習慣をつけましょう。
虚偽記載・誓約違反
交付規程では、次のような事実が判明した場合、採択・交付決定の取消事由になるとされています。
- 法令や交付規程、事務局の指示に違反した場合
- 補助金を補助事業以外の用途に使用した場合
- 補助事業に関して不正・怠慢その他不適当な行為があった場合
- 申請時の誓約に反し、申請書類の記載事項が真正でないことが判明した場合
- 事業実施期限までに補助事業を完了しなかった場合
- 定められた期限内に実績報告書の提出を怠った場合
これらは意図的な不正だけでなく、「計画の実態と申請内容にズレがあった」「経費の使途が計画と異なっていた」といった、結果的な不備も含まれ得ます。経営計画・補助事業計画に書いた内容と、実際に行う取組にズレが出ないよう、計画段階で無理のない内容にしておくことが重要です。
4見直すべき申請書類チェックリスト
ここまで見てきたとおり、不採択・不交付の多くは「要件の思い込み」や「書類の記載・添付漏れ」から生まれます。申請前に、以下のポイントを一つずつ見直してみましょう。
- 自社の業種区分と、実際の常時使用する従業員数が、小規模事業者の基準に当てはまっているか
- 対象外の事業者・対象外の事業に該当していないか(医療関係、各種法人、創業前、風俗営業等)
- 経営計画書・補助事業計画書の内容と、実際に申請する経費・取組が一致しているか
- 商工会・商工会議所への事業支援計画書の発行依頼を、締切より十分前に行っているか
- 過去に持続化補助金の採択を受けている場合、再申請の制限に抵触していないか
- インボイス特例・賃金引上げ特例を選ぶ場合、実績報告時点で本当に要件を満たせる見込みか
- 見積書・契約書・請求書など、経費の裏付けとなる書類を事前に準備できているか
- 交付決定日より前に発注・契約・支払いをしようとしていないか
- 消費税の適用区分(課税事業者・免税事業者等)の記載に誤りがないか
特に、経営計画書・補助事業計画書は「自社が自ら検討した内容である」ことが前提とされています。テンプレートをそのまま使い回したような内容や、自社の数字・市場分析に基づかない記載は、審査で評価されにくいだけでなく、実態との乖離を指摘される原因にもなります。

5再申請を検討する場合の注意点
一度不採択になった場合でも、要件を満たしていれば再度申請することは可能です。ただし、同じ内容のまま出し直しても、指摘されたであろう弱点が解消されていなければ、結果は変わりにくいものです。再申請を検討する際は、次の点を意識してみてください。
- 前回の申請内容を振り返り、自社分析・数値根拠・実現可能性が十分だったかを見直す
- 小規模事業者の要件や対象外事業者に該当していないか、最新の公募要領で改めて確認する
- 過去に採択を受けたことがある場合は、再申請の制限(報告書の提出状況や経過期間など)に抵触しないか確認する
- 商工会・商工会議所への相談を、前回より早いタイミングで行う
- 見積書・経費の内訳など、客観的な裏付け資料を事前に揃えておく
なお、過去の申請で不採択だった事実自体が、次回の審査に不利に働くかどうかは、公募回ごとの取り扱いによって異なります。この点も含めて、最新の公募要領を確認するか、申請支援の実績がある専門家に相談することをおすすめします。
6よくある質問
いいえ。補助対象となる経費の発注・契約・支払いは、交付決定通知書に記載された交付決定日以降に行う必要があります。採択通知書を受け取っただけの段階で発注すると、補助対象外となる可能性がありますので注意してください。
特例の要件を満たせなかった場合、上乗せ部分だけでなく、通常枠を含めた補助金全体が交付されないことがあります。特例を選ぶ際は、実現可能性を慎重に見極めることが大切です。
採択・不採択の結果は通知されますが、審査内容についての個別の問い合わせには応じられないのが一般的です。だからこそ、申請前にご自身で要件と書類を見直しておくことが重要になります。
7まとめ
小規模事業者持続化補助金における「不採択」は、審査で採択されない場合と、採択後に交付されない・取消になる場合の2通りがあります。前者は小規模事業者の要件や対象外事業者に該当していないかの確認不足、後者は交付決定前の発注や実績報告の不備、特例要件の未達などが主な原因です。どちらも、申請前・事業実施中の書類チェックを丁寧に行うことで、多くは未然に防ぐことができます。
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本記事の情報は公開時点(2026年10月)のものです。








