小規模事業者持続化補助金は赤字決算でも申請できる?赤字事業者の優遇ポイント
この記事は2026年10月11日に更新されました(第20回公募の受付・締切日程を最新情報に更新)。
「ここ数年、赤字決算が続いているけれど、小規模事業者持続化補助金は申請できるのだろうか」「赤字だと審査で不利になるのでは」——そんな不安を抱えている個人事業主の方は少なくありません。実は、小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>では、赤字であること自体が申請の妨げになるわけではなく、むしろ一定の条件を満たすことで補助率が引き上げられたり、採択で優遇されたりする仕組みがあります。この記事では、第20回公募(2026年5月27日公表の公募要領)の内容をもとに 第20回公募(2026年11月5日受付開始、2026年12月15日17:00締切)の公募要領の内容をもとにしています。、赤字事業者が知っておくべきポイントと、申請時に注意すべき点を実務目線で解説します。
1赤字決算でも小規模事業者持続化補助金は申請できる
まず結論からお伝えすると、赤字決算であること自体を理由に、小規模事業者持続化補助金の対象から外れることはありません。補助対象者の要件は、業種ごとの従業員数による「小規模事業者」であるかどうかが基本であり、黒字・赤字といった決算の状況そのものは、基本的な申請資格の判定には使われていません。
むしろ、小規模事業者持続化補助金は「物価高騰や賃上げ、インボイス制度の導入など、今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更に対応するための販路開拓等の取組」を支援する制度であり、経営環境が厳しい状況にある事業者こそ活用を検討する価値があります。経営計画をしっかり策定し、売上・利益の増加が見込める取組であることを示せれば、赤字であっても応募は可能です。
赤字かどうかよりも重視されるのは、「自社の経営状況を分析したうえで、売上高・売上総利益の増加につながる具体的な取組が計画されているか」という点です。赤字決算であっても、課題分析と改善策が説得力を持って説明できていれば、審査でマイナスになるとは限りません。
2補助対象者としての基本要件をおさらい
赤字・黒字にかかわらず、申請にあたってはまず以下の基本要件を満たしている必要があります。
| 業種 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
ここで特に迷いやすいのが「製造業その他」の考え方です。「製造業その他」とは、自社で流通性のあるモノ(ソフトウェアのような無形の商品やサービスも含みます)を生産する事業や、他者が生産したモノに加工などを施してさらに価値を付け加える事業(在庫として扱う商品を製造する事業)を指します。また、「商業・サービス業」「宿泊業・娯楽業」「製造業」のどの区分にも当てはめにくい事業(建設業・運送業など)を営んでいる場合や、区分の異なる複数の事業を営んでいて判断が難しい場合も、「その他」として「製造業その他」の従業員基準(20人以下)が使われます。
このほか、資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有されていないことも条件となります。また、確定している直近過去3年分の課税所得の年平均額に関する要件も設けられています。この数値要件の詳細は公募要領の「2.補助対象者」に記載がありますので、申請前に必ず最新の公募要領でご確認ください。
この課税所得の年平均額に関する要件は、赤字・黒字そのものとは別の基準です。「赤字だから自動的に対象外になる」わけでも「赤字だから必ず対象になる」わけでもない点にご注意ください。
3赤字事業者が知っておくべき優遇制度「賃金引上げ特例(赤字事業者)」
ここからが本題です。小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>の第20回公募には、「賃金引上げ特例」という制度があり、その中に赤字の事業者向けの追加要件が設けられています。これを活用すると、通常は3分の2の補助率が、赤字事業者の場合は4分の3に引き上げられます。
賃金引上げ特例とは
賃金引上げ特例は、最低賃金の引上げが続くなかで、さらなる賃上げに取り組む意欲的な小規模事業者を支援する制度です。具体的には、2027年4月1日から補助事業実施期限日(2028年3月31日)までの12か月間と、その前年同月の12か月間を比較し、従業員(非常勤を含み、代表者・役員・専従者は含みません)1人あたりの給与支給総額を年平均3.0%以上増加させることが要件です。
この特例を選択すると、補助上限額に150万円が上乗せされます(基本の補助上限50万円と合わせて200万円)。さらにインボイス特例も満たす場合は、両特例の要件を満たす事業者として200万円の上乗せが適用されます(詳細な上乗せの組み合わせは公募要領でご確認ください)。
赤字事業者はさらに補助率が3/4に引き上がる
賃金引上げ特例に取り組む事業者のうち、業績が赤字の事業者については、補助上限の引上げに加えて補助率が2/3から3/4へ引き上がります(インボイス特例対象事業者の場合は、インボイス特例による上乗せ部分も含みます)。加えて、後述する「赤字賃上げ加点」が自動的に適用され、採択審査において優先的に採択される仕組みになっています。
| 通常の補助率 | 2/3 |
|---|---|
| 賃金引上げ特例(赤字事業者)の補助率 | 3/4 |
| 赤字の判定基準 | 直近1期または直近1年間の課税所得金額がゼロ以下 |
| 採択における優遇 | 赤字賃上げ加点が自動適用され、優先採択の対象となる |
「赤字」の判定方法
ここでいう赤字とは、直近1期または直近1年間の「課税所得金額」がゼロ以下であることを指します。法人と個人事業主で、確認する書類が異なります。
- 法人の場合:直近1期分の法人税申告書の別表一・別表四にある「所得金額又は欠損金額」欄の金額
- 個人事業主の場合:直近1年間の所得税および復興特別所得税の確定申告書第一表にある「課税される所得金額」欄の金額
個人事業主の方であれば、確定申告書第一表の「課税される所得金額」欄がゼロまたはマイナスであれば、この追加要件を満たすことになります。日々の記帳や確定申告の内容がそのまま判定材料になりますので、まずはお手元の直近の確定申告書を確認してみてください。
赤字だからといって自動的に補助率が上がるわけではありません。あくまで「賃金引上げ特例」に取り組み、かつ給与支給総額の年平均3.0%以上の引き上げ目標を設定・表明することが前提です。赤字であることは、あくまで「追加要件」という位置づけになります。
4赤字賃上げ加点で採択が優先される仕組み
賃金引上げ特例(赤字事業者)を希望すると、採択審査における加点項目のひとつである「赤字賃上げ加点」が自動的に適用されます。これは【重点政策加点】に位置づけられており、あわせて政策加点の「賃金引上げ加点」も自動的に適用される仕組みです。
公募要領では、加点審査について「政策的観点から加点審査を行い、【重点政策加点】【政策加点】からそれぞれ1種類、合計2種類まで選択できる」とされています。赤字賃上げ加点を選択する場合は、ほかの重点政策加点との併用はできませんので、どの加点を選ぶかは事前に整理しておくとよいでしょう。
加点がつくことは採択の可能性を高める要素のひとつですが、採択を保証するものではありません。経営計画・補助事業計画の内容そのものが審査の中心であることに変わりはありませんので、「赤字賃上げ加点があるから安心」と考えすぎないようにしましょう。
5赤字事業者が申請時に用意する書類
賃金引上げ特例(赤字事業者)を申請する場合、通常の必要書類に加えて、以下の手続き・書類が必要になります。
- 電子申請システムの申請情報入力画面で「賃金引上げ特例(赤字事業者)」を選択する
- 「賃金引上げ特例・賃金引上げ加点の申請に係る誓約・同意書(様式7)」の該当箇所にチェックする
- 【個人事業主の場合】直近1年に税務署へ提出した「所得税および復興特別所得税」の確定申告書第一表の写しを提出する
- 【法人の場合】直近1期に税務署へ提出した法人税申告書の別表一・別表四の写しを提出する
さらに、採択後から交付決定までの間には、給与支給総額基準値算出表の入力や、連続する12か月分の賃金台帳の写し、雇用条件が分かる書類(雇用契約書や労働条件通知書など)の提出も必要になります。実績報告時にも、改めて賃金台帳などの提出が求められますので、賃上げの実施状況を記録・保管しておくことが大切です。
6赤字事業者が注意すべきポイント
賃金引上げ特例の要件を満たせないと、全体が不交付になるリスク
公募要領では「賃金引上げ特例を希望した場合、通常枠および賃金引上げ特例の要件を1つでも満たさない場合は、補助金は交付されません」と明記されています。これは、特例による上乗せ部分だけでなく、補助金全体が不交付となるという意味です。赤字事業者としての補助率引き上げを狙って賃金引上げ特例を選択する場合は、実際に給与支給総額を年平均3.0%以上引き上げられる見込みがあるかどうかを、申請前に慎重に見極める必要があります。
実績報告の時点で従業員の退職などにより1人あたり給与支給総額の年平均上昇率を算出できなくなった場合も、補助金は交付されません。賃上げの対象となる従業員の在籍見込みも含めて検討しておきましょう。
「従業員」の考え方が通常の申請要件と異なる
賃金引上げ特例における「従業員」は、非常勤を含み、代表者・役員・専従者は含まれません。これは、小規模事業者であるかどうかを判定する際の「常時使用する従業員」の考え方とは異なるため、混同しないよう注意が必要です。パートタイム従業員については、正社員の就業時間に換算して人数を算出する必要があるなど、計算方法も細かく定められています。
補助事業終了時点の要件未達は交付取消につながる
インボイス特例・賃金引上げ特例ともに、補助事業終了時点でそれぞれの要件を満たしていない場合は補助金が交付されません。申請時点では要件を満たしているつもりでも、事業の進捗や人員の変動によって状況が変わることがあります。年度途中でも定期的に進捗を確認しておくと安心です。
7よくある質問
赤字であること自体が審査上の減点要素として明記されているわけではありません。審査では、自社の経営状況分析の妥当性や、補助事業計画の有効性、売上高・売上総利益の増加が見込めるかどうかが重視されます。赤字の背景や今後の改善策を、経営計画(様式2)の中でしっかり説明することが大切です。
いいえ、自動的にはなりません。「賃金引上げ特例」に取り組むことを選択し、かつ直近1期または直近1年間の課税所得金額がゼロ以下であるという追加要件を満たした場合に限り、補助率が2/3から3/4に引き上がります。単に赤字決算であるというだけでは、補助率の優遇対象にはなりません。
使えます。個人事業主の場合は、直近1年間の所得税および復興特別所得税の確定申告書第一表にある「課税される所得金額」欄の金額で判定します。この欄がゼロ以下であれば、法人と同様に赤字事業者としての追加要件に該当する可能性があります。
賃金引上げ特例の要件を満たせなかった場合、上乗せ部分だけでなく補助金全体が交付されない可能性があります。無理に賃金引上げ特例を選択するのではなく、自社の人員計画や資金繰りを踏まえたうえで、通常枠での申請が適しているかどうかも含めて検討することをおすすめします。
8まとめ:赤字だからとあきらめず、まずは自社の状況を整理してみましょう
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>は、赤字決算であることを理由に申請自体が制限される制度ではありません。むしろ、賃金引上げ特例に取り組み、課税所得金額がゼロ以下という条件を満たせば、補助率が2/3から3/4に引き上がり、赤字賃上げ加点によって採択でも優遇される可能性があります。
一方で、賃金引上げ特例は「給与支給総額を年平均3.0%以上引き上げる」という実務上のハードルを伴う制度であり、要件を満たせなければ補助金全体が交付されないというリスクも併せ持っています。赤字事業者としての優遇をねらうべきか、通常の補助率で申請すべきかは、自社の人員体制や資金計画によって判断が分かれるところです。
また、この記事で触れた補助対象者の基本要件や、補助率・補助上限額の全体像については、ピラー記事「小規模事業者持続化補助金とは?対象要件と補助率をわかりやすく解説」もあわせてご覧いただくと、制度全体の理解が深まります。なお、要件や金額は公募回ごとに変更される可能性がありますので、申請の際は必ず最新の公募要領をご確認ください。
「うちの決算状況で申請できるのか分からない」「賃金引上げ特例を使うべきか判断がつかない」という場合は、お一人で悩まず、ぜひ一度ご相談ください。
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本記事の情報は公開時点(2026年10月)のものです。








